エピソード29:空中操作=Air Workの体験談。CACの思い出3

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航空大学校(CAC)
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空中での飛行機のコントロール訓練。それがエアワーク。

 

前回のTGLに続き勝手に基礎訓練を6つに大別して思い出を書いていくシリーズ。今回は「A/W」です。航空大学校では「エアワーク」と定義されてましたが「マニューバートレーニング」と言う訓練所もあるかもしれませんね。

内容をざっくり言うと航空機の軌道、動き方をコントロールする訓練です。

一般の人にとっては計器飛行と並び、「内容が想像し辛い」訓練じゃないでしょうか。

世の中にはアクロバット飛行のプロもいますから私がエアワークを語るのは若干恐れ多いですが、概要と思い出を書いていきます。

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A/W(エアワーク)の概要

大まかなイメージはアクロバット飛行(曲技飛行)を思い浮かべてください。

飛行機の軌道を制することがエアワークですが、ポイントは何でしょうか。

1つめは、軌道が3次元であることです。

例えば車やバイク、自転車は方位と速度をコントロールすることで2次元の軌道を描きます。

では飛行機は?

方位、速度、そして高度の3つをパイロットの意図した通りにコントロールすることで軌道を描きます。

2次元の軌道よりもコントロールするべき要素が1つ増えます。その分だけ複雑といえます。

2つめのポイントは、止まれないことです。

止まる=速度を0にすると例えば車なら変化する要素、コントロールするべき要素を0にできます。(車は速度が0なら方位も変化しないので)

止まることができれば、改めて周りを見て落ち着いたり、地図を見て場所を確認したり、頭を休めることができます。

しかし飛行機は止まることができませんので、変化する要素、コントロールするべき要素が常に変化します。状況変化が「起き続ける」のです。

なので基本的に頭を休めるというシーンはありません。

飛行機の訓練で頭を冷やしたり、落ち着きたい場合には教官に「You have control」して飛行機のコントロールを全て渡すしかありません。そして通常時に訓練生からそれを行うことはありません。

限られた訓練時間、1分1秒を惜しむ世界ですので。

プロライセンスを取るのであれば絶えず変化する状況を認識し、1度、1kt、1ftまで正確にコントロールし続けることが求められます。

エアワークの代表的な課目

エアワークの代表的な課目を紹介しましょう。STALL、SLOW FLIGHT、STEEP TURNの3つです。

1、STALL

名前の通り、失速または失速に近い状態まで飛行機をコントロールする+その状態から安全な状態まで「回復」させる課目です。

STALLの中にも色々な種類がありますので詳細は省きますが、初めて教官に完全失速に近い失速を実演してもらった時には…..そりゃもう胃がざわざわしました。

失速状態に近くなると、バフェットと呼ばれる現象がおきます(低速バフェット)。要はガタガタガタと機体が揺れるのです。そこから失速に入ると「カクン」っと機体が下(地面)に向いて落ちていきます。

綺麗に完全失速に近い形に持っていくとこの「カクン」で機体が大きく下に向きます。

ここで本能的に「あ、落ちる」と感じることができます。

落ちていく…!!ああ、胃がざわざわする・・・

2、SLOW FLIGHT

ノーマルな状態から、フラップやギアを出して飛行機を色々な形態にします。着陸形態に近づくにつれて飛行機の速度は低速になっていきます。なので「SLOW」FLIGHTというわけですね。

3、STEEP TURN

航空大学校では飛行機を45度以上傾けてターンするこをSTEEP TURNと呼んでました。

ちなみに一般的な旅客機では30度以上傾ける飛行は行いません。45度になると人間にかかるGが1.5Gになるので普通の人なら圧迫感を感じてしまいます。

ENGINE FAIL訓練の思い出

エアワークをやってて、空を飛ぶことを実感できた訓練といえばENGINE FAILの訓練です。

この訓練はエンジンパワーをIDLEにし、ENGINE POWERロスを「模擬」し安全に地上の「どこか」に不時着させる訓練です。

 

この訓練はエンジンが1発だけの「単発機でしか」行いません。

エンジンが2発あるならもう片方が生きてれば飛べますから(これはこれでSINGLE ENGINEという課目があります)

さてENGINE FAILの訓練は実際には不時着させるわけではありません。

地表の障害物からマージンをとった安全高度を定めて、その高度まで飛行機をパワーIDLEの状態(滑空に近い)でコントロールするのがこの訓練の中身です。

他のエアワークの課目は技の完成度を高めていく色が強かったのですが、このENGINE FAILは「生きるために自分で判断していく」という課目です。

POWERがIDLEになる場所、高度、風の吹く方向は千差万別、IDLEにしたその瞬間到達できる範囲は限られ、その中からどこにどの方位を向いてどう降りるか自分で決断してできる限りの事をして安全に降ろせるようマネジメントしていきます。

 

不時着地に民家や人がいてはいけませんし、近くに電柱や電線など危険な障害物がないか、そこに向かうとしてどうやって高度を降ろすのか、いつフラップを出し旋回をするのか。

 

自分の能力、知識をフルに使って飛行機をコントロールします。

毎回毎回、もっとこうした方が良かった別の選択肢があった、と学びがあります。

航空大学校では同期が操縦してる後ろに他に2人の学生も機体の後席にのっています。

センスのある同期のマネジメントは唸らされるものがあります、ENGINEがIDLEになった瞬間から一切無駄のない判断・コントロールを見たときはもはや感動です。

感動ばかりでなく後ろで見てるときは、冷静に俺ならこうする・こっちを選択すると自分自身のイメトレ・糧としていました。

こうして積み上げた技術/知識を持って、状況判断を行い

マニュアルはなく、教官でもない、「自分で」どこにおろしていくのか「決断する

これが、パイロットとしての実感をもたせてくれたように思いました。

日本の民間の訓練空域で一番広いのは帯広だけど

日本の空で訓練するにあたってエアワークが難しくなる点があります。それは訓練空域が狭いことです。

自衛隊が使用する空域を除き、民間の訓練空域で一番広いのは北海道・帯広周辺のHKエリアと呼ばれるエリアです。

帯広といえばそう航空大学校周辺の訓練エリアですね。

航空大学校の養成規模が大きいのはこういった恵まれた空域を使用させてもらえるからです。

でも

これはあくまでも日本の中の話であり、海外に目を向けて例えばアメリカでは、もっともっと広大な訓練エリアが設定されている場所があります。

一方で日本は例え帯広といえど、1機1機が使えるエリアは決して広くありません。

その結果、頻繁なエリアキープが必要になります。

エアワークは訓練エリア内でしか行えないのでその空域をはみ出しそうになるなら旋回して空域の中に収まるように飛行機は移動します。これをエリアキープといいます。

過去に訓練エリアをはみ出た自衛隊の機体とエアラインの旅客機が衝突した事故がありました。雫石衝突事故です。)

エリアキープは結構奥が深くて、どの課目をどこからどの順番で行うか考えなくてはなりませんし常にエリアから出ないよう状況認識することが求められます。

東海大学の学生はアメリカの広大な訓練エリアで、SLOW FLIGHTをしてSTALLしてまたSTALLしてSLOW FLIGHTをしてといった感じに効率良くどんどん課目を行えたかもしれません。

しかし日本の訓練エリアでは、SLOW FLIGHTをしてSTALLしてエリアキープのため旋回してSLOW FLIGHTしてまたエリアキープといった具合にもはやエリアキープも1つの課目かのような飛行が求められます。

まとめ

エアワークには様々な課目がある。

日本でエアワークができる空域は決して広くない!

 

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